l  The end of average (平均思考は捨てなさい)の理論


ハーバードの個性学入門:平均思考は捨てなさい.
トッド ローズ (), 小坂 恵理 (翻訳).早川書房
2017年に発刊され、2019年に文庫化されている本に記されている理論です。
2021.01 個性学入門

Todd Rose
の個性学の平均思考を排する3つの原理
「バラツキの原理」「コンテクストの原理」「迂回路の原理」を
「障害のある人の主体性回復モデル」に応用すると以下のように考えられました。

 

1.    バラツキの原理

²  資質が
複数の側面から構成される
側面のあいだの関連性は弱い
2つを満たすとバラツキがあると判断される。

²  「どちらの男性が大きいか」という質問に簡単な答えは存在しない。
しかし、「どちらの男性の方が背が高いのか」という質問なら答えは簡単。

²  複雑でばらつきのあるものを理解するために、
一次元的思考は役に立たない。

(考察)
「主体性」は、「認知」「意欲」「自分次第」「自信」「新たな価値観」の
複数の要素から構成され、要素のあいだの関連性は弱いと考えられる。
つまり、この原理から言えば、
「主体性」が「ある」~「乏しい」「ない」といった
一次元的に考えるのは困難なものだと考えられる。
「認知」「意欲」「自分次第という考え」「自信」「新たな価値観」
5つの要素が、バラついた段階を示してもよい

 

2.    コンテクストの原理

²  行動は、特性と状況の相互作用で生まれる。
状況によって異なる個性を発揮する。

²  コンテクスト=文脈、前提、状況など。

²  内向的か外交的かといった気質によって行動が決定されると思われている。

²  「あの人は外交的だ」と言っても、
ある女の子はカフェテリアでは外交的かもしれないが、
遊び場では内向的かもしれない。
ある男の子は遊び場では外交的かもしれないが、
数学の授業では内向的かもしれない。

²  人の個性は一貫しているように見える。
ただし、その一貫性は、誰もが期待するようなものではなく、
人は特定のコンテクストで首尾一貫している」のだ。
もしあなたが今日運転しているときに注意深くて神経質ならば、
明日運転するときも注意深くて神経質だと考えても間違いはないだろう。

²  個性にも状況にも常に左右されていて、人間には「本質的な性質」など存在しない。
平均すると内向的・外交的だとは言えるだろう。
しかし、平均に頼ると、人間の行動に備わった重要な詳細をすべて見逃してしまう。

²  他人の行動が特性に裏付けられているように感じられるのは、あなたがコンテクストの一部になっているからだ。
上司があなたといるときに限って尊大で横柄だったとしたら、
あなたは上司が尊大で横柄な人間だと考えるだろう。

²  きわめて身近な人物であっても、さまざまなコンテクストにおけるさまざまな姿を見る機会はない。
その結果、限定的な情報に基づいて相手の人格を判断してしまう。

(考察)
リハビリテーション場面やカンファレンスでも、特に人の特性や資質の面において、
同じ患者さんでも専門職ごとに異なる評価や見解を示すことがある。
目の前の人の「主体性」を考えるとき、
その評価の前提となっている「コンテクスト」を意識して議論をすれば、
その違いに対する適切な対応が見える可能性がある。
また、
ICFの環境因子に「人」が含まれていることに通じ、
自分も「コンテクスト」「環境因子」であることを考えると、
見た人の評価が異なってもよいのではないだろうか。

 

3.    迂回路の原理

²  人間の体、精神、モラル、職業など、いかなるタイプの成長についても、
たったひとつの正常な経路など存在しないという事実から、
個性の第三の原理は生まれた。
この原理から、以下のふたつが確認される。

1.     人生のあらゆる側面において、そしていかなるゴールを目指そうとも、
同じゴールにたどり着く道はいくつもあって、しかもどれも妥当な方法である。

2.     最適な経路は個性によって決定される。
人間の発達には厳密に定められた順序が存在しない。

²  人間は個性にばらつきがあり、しかもそれはコンテクストに左右されるので、
進歩の速度も結果に至るまでの順序も異なるのが当然だと考える。

 

Ø  自分に最もふさわしいユニークな経路を選び、うまく人生をコントロールできるようになるには?

²  自分の能力やプロファイルにどのようなバラツキがあるか
どんなコンテクストなら能力を発揮できるかを理解できると、
平均が押し付けてくる型にこだわらず、
ありのままの自分と向き合えるようになるので、
これ以上ないほどうまく人生をコントロールできるようになる。
私たちは全員が特殊なケースなのだ。

(考察)
まさに主体性研究で考えてきたことに通じる。

 

l  平均思考を排する「3つの原理」で主体性を考えると?

1.     バラツキの原理:

5つの要素から構成されている「主体性」は一次元的に評価できない。
「主体性」の構成要素(認知、意欲、自分次第という考え、自信、価値観)
に分けて評価することが妥当。
5つの要素が、バラついた段階を示してもよい。

2.     コンテクストの原理:

同じ人でも場面や状況によって「主体性」も変わる。
評価者もコンテクストであり、評価者により「主体性」の評価が変わることもある。

3.     迂回路の原理:

「主体性」再獲得までの経路・順序・速度はさまざまで、しかもどれも妥当。
行きつ戻りつの道のりであるが、一気に飛び越えて進むときもある。