20211月発行の日本リハビリテーション医学会の和文誌The Japanese Journal of Rehabilitation Medicineに主体性についての論文が掲載されました。

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タイトルは、「障害の受容」と障害のある人の主体性


”The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine” 
2020年10月の特集「障害受容・適応再考」に対するLetter to Editor (会員の声)です。
2021.02 障害受容論文

 主体性の概念を理解すると、
正しい障害受容の理解と適切な対応の一助になると思われます。

 以下に論文内容を掲載します。

 本誌 57 10 号特集「障害受容・適応再考」では,障害受容の概念について多様な8人の著者の多面的な解説が非常に興味深く,理解を深めさせてくれた.
 その中で上田の特別寄稿[1]の「障害の受容の概念は~(中略)~患者・家族を非難する用語として誤用・悪用されることが多かった.これに対しては,正しい用語理解の普及に努めるべき」との結語には強く同意した.
 そこで,正しい障害受容の理解と適切な対応を取るための一助になると思われる「主体性の概念」について伝え共有したい.


 脳卒中などの疾患により障害があり,病初期には混乱した状態に陥っても,長期的には主体的に自分らしい生活を構築していく方の経験を見聞きする.その過程は千差万別だが,筆者らは,一定の傾向が無いわけではないと考えた.
 この複雑な過程を当事者,医療者,支援者が,理解し,特徴を捉え,置かれている段階を判断して,共有できれば,適切な支援にもつながり,非常に有用ではないかと考えて多職種で研究し,「主体性回復モデル」を作成した[2]

 「主体性回復モデル」は脳損傷による中途障害者を想定し,「障害のある人がその人らしい生活を構築していくための主体性」を構成する要素は,「意欲」「自分次第という考え」「自信」の3要素であり,「認知」が下支えするとしている.
 主体的になったのちには「新しい価値観へ転換」していく方もいると想定しており,これが「障害受容」に相当すると考えられる.
 プロセスは5段階を想定しており,第0段階「できない事を認識できていない」,第1段階「行動を起こしづらい状態」,第2段階「行動を起こす準備段階」,第3段階「行動を起こせる」,第4段階「行動(生活全体)をマネジメントできる」としている.


 「障害受容論」と「主体性回復モデル」は時間経過に沿ったモデルで,最終形は価値観の変化による適応段階(障害受容)を想定している点や,行きつ戻りつの道のりを想定している点,複雑な過程をよりよく理解して周囲の人が適切な態度を取るためのものである点で類似している.
 一方,相違点は,「主体性回復モデル」では,「障害受容論」の「解決への努力期」に相当する段階を比較的詳細に扱っている点であり,どのようにして病初期の混乱している状態から自分らしい行動を起こせる状態になるのかを5つの要素について段階分けして考えることができる.加えて,適応段階(障害受容)に至る前の第3段階で「主体性」3要素は揃い,最終的な価値観の転換である「障害受容」に至らなくても積極的な生活態度から活動・参加の拡大を目指すことができると考えている.


 実際の現場での適切な対応の一助として「主体性回復を促す周囲のかかわり方」をまとめた報告[3]も同時期に発表している.

 この「障害のある人の主体性を支えていく」という考え方での支援は障害受容を促すという支援よりも対応方法やアプローチが考えやすいとも考えられ,今後の議論のたたき台として提案したい.

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2021; 58(1):95


1)
上田敏:「障害の受容」再論誤解を解き,将来を考えるJpn J Rehabil Med 2020 ; 57 : 890-897

2)Wada, S.,Hasegawa, M.: The long-term process of recovering self-leadership in patientswith disabilities due to acquired brain injury. Jpn J Compr Rehabil Sci 2019 ;10 : 29-36

3)Wada, S.,Hasegawa, M.: The long-term process of recovering self-leadership in patientswith disabilities due to acquired brain injury: II. Interactions withsurrounding people that promote recovery of self-leadership. Jpn J ComprRehabil Sci 2019 ; 10 : 50-59