【主体性研究を進める目的】

·       「障害のある人が主体的になると生活が展開して良くなっていく」ということを証明して、障害者にかかわる人に広めたい。

·       経験の少ない支援者にも現場で「主体性の段階」や「適切な支援」が分かるようにしたい。

【これまでのまとめ】

o   「スケールの試案」研究としても検証でき、臨床でも使える形にする。

·       下位尺度は主体性モデルの5つの回復軸「認知」「意欲」「自分次第という考え」「自信」「新たな価値観」を想定。

·       本人と専門職の両方の判断を加味しないと障害のある人の主体性を判断できないと思われる。「専門職の判断」を入れない場合、NAS-J-Dと同様に、第0段階と第4段階のスコアがほぼ同じになってしまう。

·       専門職が、その人の認識が適切か否かを判断するには、評価期間として1~2か月を要すると思われる。

·       「行動」と「能力」がマッチしているか否かを専門職が判断している。行動した・しないは、自信や価値観の変化が伴う?

·       「うつ・不安」は全体に影響を及ぼすと思われるので、「うつ・不安」のスケールも同時に測定した方がよいのではないか。JSS-DEが候補。

o   量的なスケールがうまくいかなくても、「モデル自体の利用」が臨床に有用であることを示す量的な根拠も同時に進められるとよい。

·       モデルを使って、使用したスタッフが「どう考えたか」「どう有用だったか」。

【2019年8月28日の主体性ケース検討会議の概要】

l  もともと、友人多く、母に口ごたえをすることがなかった方。発症後半年で会社を退社。3年経ってから福祉会館へ。母が過介助。歩ける能力あるが、どこへでも車いすに乗せて介助していた。その時は他人任せでやりたいこともなく、言われるがまま。しかし、母が帰省して、福祉サービスを利用した一人暮らしを2週間経験した。本人が母へ訴えて、一人で歩いて電車で会館に通所するようになった。本人曰く「大丈夫だと思ったから」。一人暮らしも始めた。母が「働くのは難しい」というのに、「働くことは社会人として当たり前の責務だ」と言い返し、自分で前職の知人に交渉して障害者雇用で復職した。母がいろいろと止めていたが、会館通所中に自信がつき、自分で切り開いた。

l  自ら動くことへの自信がなく、行動を起こせなかった方。当初は受動的に訓練センターへ通うことになった。付き添いながら練習を進めて、できることが増えるたびに、発言や行動に変化が出てきた。欲しいものを自分から発信し、行動するようになった。就労にも自信がなく消極的だったが、就労支援継続B型を2回目に見学に行ったときに、道のりが以前よりも早く歩けたことやバス利用になれてきたことなどから自信がつき、就労継続B型へ通所開始となった。そこでの評価も良く、さらに自信につながった。自分のペースでの仕事を継続。

→ 段階を評価する際に「本人が実際おこなった行動」だけで判断しているのではなく、その人がどういう思いで行動しているかも加味して段階を考えるのではないか。



【今日の議題】

主体性段階評価スケールの試作版について検討。


l  段階判定に困るケースについて

Ø  仕事をしていて、自分らしい生活が成り立っている段階でも「身体機能」の改善にこだわるのはあり。生活を成り立たせる方向へ進んでいないのに「身体機能」の改善にこだわってしまう場合が「第0段階」ではないか。

Ø  障害者に対する手当の金額は比較的大きく、生活保護より多く支給されるケースもある。このため、働かなくても家があれば生活できるので、就労に対する意欲が低く、実現困難な夢(麻痺の改善)に向かってしまう場合もありうる。

→ 研究の前提としては「病状が安定している」「経済的・社会的な状況がある程度安定している」を挙げて、それ以外の要素について検討しています。しかし、何をもって「自分らしい生活」であるかの議論の余地はありますので、今後も判断に困るケースの提示と検討はしていきたいです。

l  スケール作成について

Ø  段階をしっかりと分けるなら、各段階の特徴をもとにスケールを作った方が良いのではないか。

Ø  簡単に言えば、血液型診断のように「A型はこういう人」というイメージ。

Ø  回復軸ごとに分けて評価するなら、軸ごとの問診ガイドをつくってはどうか。

Ø  回復軸ごとに評価して、段階を決めるのは、臨床場面で生かすには難しいのではないか。

Ø  軸ごとの分析結果で「進んでいる軸」と「進んでいない軸」を表し、「足を引っ張っている軸」の認識を持つことが臨床で有用ではないか。失語症のSLTAのように、アプローチの目安になる。(自分次第という考えがあるのに、認知が不十分な人は、認知を上げていこうという、方針の共有につながる可能性がある)

【今後の課題】

 上記をふまえ、会議参加者からの提案もあり、以下のような表のイメージを考えました。空欄にはそれぞれの特徴が入って、当てはまれば〇をつけるイメージです。

それぞれの軸(認知、意欲など)について、典型的な質問例をつくりたいと思います。

 

認知

意欲

自分次第

自信

価値観

0段階

 

 

 

 

 

1段階

 

 

 

 

 

2段階

 

 

 

 

 

3段階

 

 

 

 

 

4段階